ラーメン店の喫煙・禁煙対応は、2020年4月の改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例の全面施行で大きく変わった。飲食店の屋内は原則禁煙になり、たばこを吸えるのは法令の要件を満たした喫煙室の中か、条件を満たす一部の既存店に限られる。東京都の令和6年度の実態調査では、屋内を全面禁煙にしている都内の飲食店は69.4%で、令和2年度の61.7%から増えている。
- 飲食店の屋内は原則禁煙、例外は法令の要件を満たす喫煙室だけ
- 都内では時間帯で喫煙可と禁煙を切り替えることは認められていない
- 都内の喫煙可能店は、従業員がいない(同居の親族のみ)既存の小規模店に限られる
- 喫煙室のある店は店頭の標識掲示が義務、20歳未満は喫煙エリアに入れない
- 標識を出していない店も2割あり、表示がないことは禁煙の証明にならない
都内で喫煙できるラーメン店を探すと、店主ひとりや同居の家族だけで営む小さな店に行き当たることがある。その理由は、国の法律と都の条例の線引きにある。制度の仕組みと店が選べる対応の型を知っておくと、来店前に見当をつけやすくなる。
屋内は原則禁煙、例外は法令上の喫煙室だけ
改正健康増進法により、客席のある飲食店は屋内が原則禁煙になった。屋内で喫煙できるのは、法令の基準を満たした喫煙室を設けた場合に限られる。ここでいう屋内とは、屋根があり、側壁がおおむね半分以上覆われている建物の内部を指す。これに当たらない屋外は規制の対象外だが、店が喫煙場所をつくるときは、望まない受動喫煙を生じさせない場所とするよう配慮しなければならない。
喫煙室の基準は、厚生労働省が次の3点で示している。たばこの煙が室外に流れ出ないよう壁や天井などで区画されていること、出入口で室外から室内へ流れ込む空気の気流が0.2m毎秒以上であること、煙が屋外または外部に排気されていることである。東京都の説明資料も、出入口を除いて床面から天井まで壁などで仕切られていることを求めている。パーテーションで席を区切っただけの「分煙」は、この基準を満たさない限り法令上の喫煙室には当たらない。
喫煙室は4種類、飲食できるかどうかで分かれる
法令上の喫煙室は4種類あり、喫煙室の中で食事ができるかどうかが種類によって違う。厚生労働省の整理は次のとおりである。
| 喫煙室の種類 | 喫煙と飲食 | 設置できる施設 |
|---|---|---|
| 喫煙専用室 | 喫煙可、飲食不可 | 施設の一部に設置 |
| 加熱式たばこ専用喫煙室(経過措置) | 加熱式たばこに限り喫煙可、飲食可 | 施設の一部に設置 |
| 喫煙目的室 | 喫煙可、主食を除く飲食可 | 喫煙目的施設に限る |
| 喫煙可能室(経過措置) | 喫煙可、飲食可 | 既存の小規模飲食店に限る、施設の全部または一部 |
喫煙専用室ではたばこは吸えるが、ラーメンを食べながら吸うことはできない。食事をしながら吸えるのは、加熱式たばこ専用喫煙室(加熱式たばこのみ)と、経過措置の喫煙可能室の2つである。加熱式たばこ専用喫煙室の法令上の名称は「指定たばこ専用喫煙室」という。
喫煙目的室を設けられる喫煙目的施設は、たばこの対面販売をし、喫煙場所の提供を主な目的として、主食を主として出さない飲食営業を行う施設で、厚生労働省はシガーバーを例に挙げる。主食の例には米飯類やパン類と並んで麺類が入っており、東京都のハンドブックも「めん類」を挙げている。ラーメンを主に出す店はこの類型に入りにくい。最終的な判断は実情に応じて行われる。
どの種類の喫煙室でも、20歳未満の人の立ち入りは禁止されている。喫煙を目的としない場合でも、従業員であっても同じである。喫煙可能店として店内全体を喫煙可にした場合は、20歳未満の人を店内に立ち入らせてはならない。
都内の飲食店が選んでいる対応
東京都の「飲食店における受動喫煙防止対策実態調査」(令和6年度、n=3,350)では、都内の飲食店の対応は次のようになっている。これは飲食店全体の数字で、ラーメン店に限った公的な統計は確認できなかった。
- 屋内・屋外とも全面禁煙 40.7%
- 屋内は全面禁煙、屋外に喫煙場所 28.7%
- 屋内の一部または全部を喫煙可能室(店)にした 17.0%
- 喫煙目的室(店)にした 5.3%
- 喫煙専用室を設置 1.7%
- 指定たばこ専用喫煙室を設置 1.2%
上の2つを合わせた69.4%が屋内全面禁煙の店である。喫煙可能室(店)の業種は、酒場・ビヤホール・バー等が55.6%で最も多く、喫茶店が13.9%で続く。
屋内を全面禁煙にする店
店内に喫煙室を一切設けず、客は全員禁煙の環境で食事をする形である。調査では屋外も含めて全面禁煙にした店が最も多い。
屋外に喫煙場所を設ける店
店内は禁煙にして、店の外に喫煙場所を置く形である。屋外は規制の対象外だが、店には受動喫煙を生じさせない場所を選ぶ配慮が求められる。店内との境目が壁やガラス扉で仕切られていないテラス席は、屋根に覆われている部分までが屋内として扱われ、そこでは喫煙できない。
喫煙室を設ける店
前の章の基準を満たす喫煙室を店内の一部に設ける形である。区画や排気の設備が必要になるため、調査で喫煙専用室や指定たばこ専用喫煙室を設けた店は合わせて2.9%にとどまる。
時間帯で切り替える運用は認められていない
開店直後や深夜だけ喫煙可にするといった時間帯による切り替えについて、東京都のハンドブックは、規制が施設単位で適用されるため、時間によって施設の区分を変えることは認められていないと答えている。都内で「この時間帯だけ吸える」という形を選ぶことはできない。都外の自治体の扱いは確認できていない。
法律と条例、二つのルールが重なっている
喫煙可能室は、国の法律が既存の小規模店のために設けた経過措置である。対象になるのは、2020年4月1日時点で営業していて、資本金5,000万円以下、客席面積100平方メートル以下の店である。資本金が5,000万円以下でも、大規模会社が株式の2分の1以上を持つ会社などは除かれる。店主や店舗が変わった場合に引き続き対象になるかは、事業の継続性、経営主体の同一性、店舗の同一性などから総合的に判断される。
手続きも国と都で分けて考える必要がある。法律が定めているのは、条件を満たすことを示す書類を店に備え付けて保存する義務である。東京都はこれに加えて、喫煙可能室(店)を選んだ飲食店に保健所への届出を求めている。都の保健所の案内では、保存する書類として営業許可書、客席面積の分かる図面、資本金の分かる書類(個人は確定申告書)、従業員がいないことを確認できる書類が挙げられている。
東京都受動喫煙防止条例は、ここにもう一つ条件を足している。従業員を雇っている店には喫煙可能室を認めていない。条例で従業員から除かれるのは、同居の親族のみを使用する場合である。別居の家族やアルバイトが一人でもいれば従業員のいる店になる。都のハンドブックは、受動喫煙を防ぎにくい立場の従業員を守ることを都独自ルールの理由に挙げている。
| ルール | 対象 | 喫煙可能室を設けられる条件 |
|---|---|---|
| 改正健康増進法(2020年4月全面施行) | 全国 | 2020年4月1日時点で営業、資本金5,000万円以下、客席100平方メートル以下の既存店。書類の備付け・保存が必要 |
| 東京都受動喫煙防止条例(2020年4月全面施行) | 都内 | 法の条件に加えて従業員がいないこと(同居の親族のみなら可)。保健所への届出が必要 |
従業員がいる店でも、喫煙専用室や指定たばこ専用喫煙室を設ければ店内の一部で喫煙できる。ただし前者は飲食不可、後者は加熱式たばこに限られる。喫煙可能室と指定たばこ専用喫煙室の経過措置は、終了時期が決まっていない。法律は「別に法律で定める日までの間」としている。
従業員のいない小さな店で喫煙可が残っている理由
都内で食事をしながら紙巻たばこを吸える店は、従業員のいない既存の小規模店にほぼ限られる。都の令和6年度調査では、従業員がいない小規模飲食店(n=961)の41.3%が喫煙可能室(店)を選んでいる。飲食店全体では17.0%である。
店頭の標識は義務、表示を手がかりに確かめる
店頭の標識は店の配慮ではなく、法令上の義務である。喫煙室を設けた店は、喫煙室の出入口と、店の主たる出入口の2か所に標識を掲示しなければならない。法令上の名称は、喫煙専用室なら「喫煙専用室標識」と「喫煙専用室設置施設等標識」、喫煙可能室なら「喫煙可能室標識」と「喫煙可能室設置施設標識」となる。厚生労働省の一般向けの標識は「喫煙専用室あり」「加熱式たばこ専用喫煙室あり」「喫煙目的室あり」「喫煙可能室あり」などと表示され、16種類ある。店全体を喫煙可にする喫煙可能店は、店舗の出入口に掲示する。
主たる出入口の設置施設標識を掲示しない場合、法律は50万円以下の過料を定めている。これは上限額で、金額は地方裁判所の手続きで決まる。東京都では、禁煙の飲食店にも店頭に禁煙の表示をする義務がある。標識は、喫煙できる場所である旨と20歳未満の立入禁止の旨が明記されていれば自作でもよいと都は説明している。
実態は義務に追いついていない。都の令和6年度調査では、標識を表示している店は62.4%、表示していない店は20.7%だった。表示していない理由では「義務化されていることを知らなかった」が22.1%、「表示しなくてもトラブルがない」が19.4%だった。来店前は次の方法で確かめるとよい。
- 店の公式サイトやSNSの表記を見る。喫煙可能室を設けた店は、広告や宣伝で喫煙可能室設置施設であることを明らかにする義務がある。
- グルメ情報サイトの店舗情報欄に喫煙可否が載っていれば参考にする。
- 入店前に店頭や入口の標識を見る。
- 表示が見当たらないときは、電話や入店時に直接尋ねる。
加熱式たばこや子ども連れの入店をQ&Aで
ラーメン店は法律で禁煙にしなければならないのですか。
客席のある飲食店の屋内は原則禁煙である。例外は、法令の基準を満たす喫煙室を設けた場合と、経過措置の喫煙可能室を選んだ既存の小規模店に限られる。都内の喫煙可能室は、従業員がいない(同居の親族のみなら可)店しか設けられない。
開店直後や深夜だけ喫煙可にしている店はありますか。
東京都は、規制が施設単位で適用されるため、時間によって施設の区分を変えることを認めていない。都内では時間帯で喫煙可と禁煙を切り替える運用はできない。
喫煙可の表示がない店は禁煙と考えてよいですか。
喫煙室のある店には標識の掲示義務があり、都内では禁煙の店にも店頭表示の義務がある。ただし都の令和6年度調査では標識を表示していない店が20.7%あり、表示がないことだけでは判断できない。気になる場合は店に尋ねるのが確実である。
喫煙室のある店では、煙は客席に流れてきませんか。
法令上の喫煙室は、壁や天井で区画し、出入口で0.2m毎秒以上の気流を確保し、煙を屋外に排気することが求められている。パーテーションで区切っただけの席はこの基準に当たらない。においの感じ方を店ごとに比べた公的な調査は確認できなかった。
子ども連れで喫煙可の店に入れますか。
20歳未満の人は喫煙室に入れず、店全体が喫煙可の喫煙可能店には入店できない。喫煙室が店の一部だけにある店なら、禁煙の客席は利用できる。都の条例は、保護者に18歳未満の子どもを受動喫煙から守るよう努めることも求めている。
加熱式たばこなら店内で吸えますか。
加熱式たばこ専用喫煙室(法令上は指定たばこ専用喫煙室)がある店なら、その中で加熱式たばこを吸いながら飲食できる。喫煙室のない客席では、加熱式たばこも吸えない。
店の外の喫煙スペースは規制の対象ですか。
屋外は規制の対象外だが、店は受動喫煙を生じさせない場所にするよう配慮しなければならない。店内との境目が壁やガラス扉で仕切られていないテラス席は、屋根のある部分までが屋内扱いになり、喫煙できない。
喫煙可の店は今後も残っていきますか。
喫煙可能室と加熱式たばこ専用喫煙室は経過措置で、終了日は別に法律で定めるとされ、まだ決まっていない。当面は制度上残るが、新しく開業した店は喫煙可能室を選べない。
主流は屋内禁煙、喫煙可は従業員のいない小さな店に
都内の飲食店では屋内全面禁煙が約7割を占め、食事をしながら紙巻たばこを吸える店は、2020年4月以前から営業する従業員のいない小規模店にほぼ限られる。時間帯で切り替える運用は都内では認められておらず、喫煙室には壁と天井による区画や排気の基準がある。来店前は公式サイトや店頭の標識を確かめ、表示がなければ店に尋ねるとよい。本記事は制度の概要を紹介するもので、個別の店舗の判断や法的な助言に代わるものではない。営業上の判断は所管の保健所に確認してほしい。
- e-Gov法令検索「健康増進法」(平成14年法律第103号、附則 平成30年法律第78号を含む) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/414AC0000000103 確認日 2026年10月10日
- 厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙」改正法のポイント https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/ 確認日 2026年10月10日
- 厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙」各種喫煙室早わかり https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/smoking_room/ 確認日 2026年10月10日
- 厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙」標識の一覧 https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/sign/ 確認日 2026年10月10日
- 厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙」飲食店のみなさまへ https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/business/restaurant/type_1.php 確認日 2026年10月10日
- 東京都「東京都受動喫煙防止条例」条文 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/tokyo/file/040401jorei.pdf 確認日 2026年10月10日
- 東京都福祉保健局「店内禁煙 健康増進法・東京都受動喫煙防止条例(第3版)施設管理者向けハンドブック」令和5年2月 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/kitsuen/leaflet/shisetsukanrihandbook.files/202302__judoukituen_pamphlet.pdf 確認日 2026年10月10日
- 東京都福祉保健局「東京都受動喫煙防止条例について」2019年3月 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/tokyo/file/0020190329.pdf 確認日 2026年10月10日
- 東京都多摩小平保健所「喫煙可能店(室):従業員がいない小規模飲食店(既存飲食特定施設)の特例」 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamakodaira/tabako/judoukitsuen/shokibo_inshokuten_tokurei 確認日 2026年10月10日
- 東京都多摩府中保健所「標識の掲示義務について」 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamafuchu/kitsuen/hyoshiki 確認日 2026年10月10日
- 東京都多摩府中保健所 飲食店向けの案内(広告・宣伝時の明示) https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamafuchu/kitsuen/kitsuen_inshokuten/inshokuten2 確認日 2026年10月10日
- 東京都保健医療局「東京都における受動喫煙対策の進捗状況等検討報告 資料編」資料5-3(飲食店における受動喫煙防止対策実態調査 令和6年度)令和7年3月6日 https://kenko-station.metro.tokyo.lg.jp/files/06suishinkaigi02_shiryou5-3.pdf 確認日 2026年10月10日
アイキャッチ画像: 編集部の取材写真
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