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ワンタンメンという選択肢|雲呑の歴史と楽しみ方

ワンタンメンは、ラーメンにワンタンを足しただけのメニューなのだろうか。単なるトッピングの延長と思われがちだが、ワンタンには広東の雲呑麺という食文化の背景があり、香港には広州の技を受け継いだ老舗もある。メニューにラーメンとは別に「ワンタンメン」や「ワンタン麺」が並んでいたとき、選ぶかどうかを判断できるよう、名前の由来から皮の中身、店ごとの違いまでを公的資料と店の公式情報をもとに整理する。

ワンタンメンのあらまし

  • ワンタンの名前の由来と歴史、日本での位置づけ
  • 香港の老舗「麥奀雲呑麺世家」の歩み(広州から香港へ)
  • 香港式と広州式のワンタンの違い、包み方による違い
  • ワンタンの皮の特徴と、食品成分表で見る皮の中身
  • 麺なしのワンタンスープという選択肢
  • ラーメン店でのワンタンメンの位置づけと選び方
ワンタンが浮かぶワンタンメン(生成AIによるイメージ画像)
イメージ画像(生成AIで作成した画像で、特定の店の写真ではありません)

ワンタンの語源と歴史

ワンタンは中国の北方では「餛飩(フントゥン)」と呼ばれる食べ物で、広東語では「ワンタン」と発音する。この音に同じ発音の「雲呑」という字が当てられた。川崎市の学校給食の資料は「ワンタンは広東語で『雲呑』と書き、スープに浮いている様子が雲のように見えることから、名付けられたといわれています」と説明しており、北九州市の給食資料にも雲のように見えるという説明がある。雲に見立てた字だという話は、こうした伝承として紹介されているものだ。

小麦粉の皮で具を包む食べ物そのものの歴史は古い。新華網(2024年2月13日)によると、山東省滕州の薛国故城にある約2,500年前の薛国国君の墓から、銅の器(銅簠)に入った「水餃子に似た食物」が出土している。黄色い三角形で長辺はおよそ5〜6cm、表面を白い粉が覆い、中には詰め物のような屑が残っていたが、中身が何かはわかっていない。この出土品は餃子の起源をめぐる話として紹介されているもので、ワンタンの原型と確かめられた事実ではない。

日本での広まり方について、全国製麺協同組合連合会(全麺連)は「日本では焼売、春巻は中華料理店のご飯のおかずとして人気メニューとなり、ワンタンはラーメンのバリエーションとして定着しました」と説明している。全麺連自身が「歴史については諸説あります」と添えている点も押さえておきたい。ワンタンがいつ、どこから日本に伝わったのかは、公的資料では確認できなかった。

香港の老舗「麥奀雲呑麺世家」の歩み

香港の雲呑麺の店として知られるのが、中環にある「麥奀雲呑麺世家」(公式表記は麥奀雲吞麵世家、英語名はMak's Noodle)だ。この店は広州で生まれた老舗ではない。広州の雲呑麺の技を香港で受け継いだ店である。店の公式サイトの「緣起」によると、店を開いた麥奀(本名は麥鏡鴻)の雲呑の作り方は、1920年代の広州で雲呑麺の名門として知られ「広州雲呑麺の王」と呼ばれた父、麥煥池に由来する。

時期 出来事(店の公式サイト「緣起」による)
1920年代 父の麥煥池が広州の雲呑麺の名門として知られ、「広州雲呑麺の王」と呼ばれる
1940年代初め 麥奀(麥鏡鴻)が父の技を受け継ぐ
その後 香港に移り、上環の金龍酒家で雲呑麺を任される
1968年 中環の機利文街の大排檔で、最初の店「麥奀記」を開く
1980年代 退職の年齢になってから、中環の威靈頓街(ウェリントン・ストリート)で「麥奀雲吞麵世家」を開いて復帰する
香港政府観光局も、この店を「1980年代にウェリントン・ストリートで開業し、その伝統は戦前の広州に遡る」と紹介している。つまり今の店の開業は1980年代で、第1号の「麥奀記」は1968年、技の源流は1920年代の広州にある。店の歩みはそのまま、広州の雲呑麺が香港に渡って根づいた流れを示している。

香港式と広州式のワンタンメン

広東の雲呑麺は、麺とワンタンを熱いスープに入れた一杯だ。同じ広東の流れでも、香港と広州ではワンタンの作り方に違いがある。ミシュランガイド香港は、香港式のワンタンを「エビに豚肉を合わせた餡と、薄く繊細な皮で知られる」と説明し、広州式は一口大で赤身の豚肉が主体だと対比している。

麺について、ミシュランガイド香港は竹で生地を押して作る弾力のある「竹昇麺」や、アヒルの卵を使う「鴨蛋麺」を挙げている。香港式が極細麺だという説明は確認できなかった。スープは干しヒラメ、豚骨、エビの殻などで煮出す例が紹介されており、ニラを添える店もある。同ガイドは、ワンタン作りが香港の無形文化遺産の要素として認められているとも紹介している。

要素 香港式 広州式
餡 エビに豚肉を合わせる 赤身の豚肉が主体
大きさ・皮 薄く繊細な皮 一口大
麺 竹昇麺や鴨蛋麺を使う店がある 出典に比較の記載なし
スープ・薬味 干しヒラメ・豚骨・エビの殻などで煮出す例があり、ニラを添える店もある 出典に比較の記載なし

ミシュランガイド香港の記述をもとに作成。広州式の麺やスープとの違いまでは示されていないため、表では空けている。

日本のラーメン店のワンタンメンと並べると、違いは次のようになる。日本ではワンタンがラーメンのバリエーションとして定着したため、スープや麺は店のラーメンに合わせる形が多くなる。

要素 広東・香港式 日本のラーメン店
麺 竹昇麺や鴨蛋麺など雲呑麺用の麺 店のラーメンと同じ麺を使うことがある
ワンタンの具 エビに豚肉を合わせる(香港式) 店ごとに異なる
スープ 干しヒラメや豚骨、エビの殻などで煮出す例がある 店の看板スープ(醤油・塩など)に合わせることがある

ワンタンの皮の特徴

ワンタンの印象を大きく左右するのが皮だ。全麺連によると、ワンタンの皮はかんすいやコーンスターチを練り合わせ、やわらかさと弾力を持たせて作る。大きさは餃子よりもひと回り大きな8〜10cmの正方形が一般的で、厚さはシュウマイより厚めで餃子より薄めに作られる。ラーメンの麺にも使われるかんすいを練り込む点が、皮のやわらかさと弾力の元になっている。餃子・焼売・雲呑・春巻の皮は、業界では生めん類の区分に入っている。

皮のポイント
・材料にかんすいやコーンスターチを使い、やわらかさと弾力を出す
・大きさは8〜10cmの正方形が一般的(餃子よりひと回り大きい)
・厚さは餃子より薄く、シュウマイより厚め

食品成分表で見る皮の中身

文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年には、「ワンタンの皮」という項目がない。そこで、近い食品であるぎょうざの皮としゅうまいの皮、参考として中華めんの値を並べた。いずれも生の状態で、可食部100g当たりの数字である。ワンタンの皮そのものの値ではないので、あくまで目安として見てほしい。

食品(生、可食部100g当たり) エネルギー 水分 たんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量
ぎょうざの皮(01074) 275kcal 32.0g 9.3g 1.4g 57.0g 0g
しゅうまいの皮(01075) 275kcal 31.1g 8.3g 1.4g 58.9g 0g
参考 中華めん(01047) 249kcal 33.0g 8.6g 1.2g 55.7g 1.0g

出典 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」第2章。ワンタンの皮は成分表に項目がないため、ぎょうざの皮・しゅうまいの皮の値を目安として示した。

表を見ると、ぎょうざの皮もしゅうまいの皮も食塩相当量は0gだ。皮そのものにはほとんど塩分がなく、ワンタンメンの塩分はほぼスープから来ることになる。塩分が気になるときは、ワンタンの数よりもスープを飲む量で調整するほうが効く。一方でエネルギーは、皮のほうが中華めんより100g当たり26kcal多い。ワンタンを増やせば、そのぶん皮と餡の分だけ一杯の量は増える。

包み方による違い

ワンタンの包み方にはいくつかの型があり、店によって使い分けている。代表的なものに、皮を三角形に折るシンプルな三角包み、さらに両端をひねって合わせる巾着型、四角く整える四角包みなどがある。皮が正方形なので、対角線で折れば三角に、角を集めれば巾着になる。香港式のように薄い皮で包むか、厚めの皮でしっかり包むかでも、仕上がりの見た目は変わる。自家製にこだわる店では、包み方にも店の個性が出る。

麺なしワンタン(ワンタンスープ)という選択肢

メニューによっては、麺を入れずにワンタンとスープだけで提供する「ワンタンスープ」を用意している店もある。がっつり麺を食べたい気分ではないときや、ラーメンと合わせて小鉢感覚で追加したいときの選択肢になる。専門店の中には、ワンタンメンとワンタンスープの両方をメニューに載せ、量や好みに応じて選べるようにしている店もある。川崎市や北九州市の学校給食の資料にもワンタンスープが登場しており、麺なしのワンタンは給食でもなじみのある食べ方だ。

ラーメン店でのワンタンメンの位置づけ

全麺連が説明するとおり、日本ではワンタンはラーメンのバリエーションとして定着した。そのため日本のラーメン店では、ワンタンメンを看板メニューとして独立させている店もあれば、通常のラーメンに追加トッピングとしてワンタンを乗せる形で出す店もある。前者は自家製の皮でワンタンを包む店が多く、後者は既存のラーメンにワンタンを足す位置づけになる。どちらも「ワンタン麺」と呼ばれることがあるため、専門店として出しているのか、トッピングの延長なのかを見分けるには、メニューの説明や写真を確認するのが確実だ。

見分け方のヒント
自家製ワンタンをうたう店は、皮の厚さや包み方に個性が出やすい。もちもちとした厚めの皮か、つるりとした薄い皮かは、メニューの写真や店の説明で事前にチェックできることが多い。餡の説明にエビの文字があれば香港式寄り、豚肉だけなら広州式に近い作りだと見当がつく。

チャーシューワンタンメンという組み合わせ

ワンタンメンにチャーシューを合わせた「チャーシューワンタンメン」も、中華そば店でよく見かける組み合わせだ。ワンタンの柔らかい食感と、チャーシューのしっかりとした食べ応えを一杯で両方味わえる。中央線グルメ・ラーメン広場でも、銀座の老舗「共楽」のようにチャーシューワンタンめんを看板にする店を取り上げている。

選び方のポイント

  • 自家製ワンタンかどうかをメニューや店の説明で確認する
  • ワンタンの具材(エビと豚肉を合わせた香港式寄りか、豚肉主体か)の好みで選ぶ
  • あっさりしたスープと合わせたいなら清湯系、しっかりした味を求めるなら醤油・味噌系のワンタンメンを選ぶ
  • 塩分が気になるときは、皮ではなくスープの量で加減する(皮の食塩相当量は成分表の近い食品で0g)
  • チャーシューなど他の具材との組み合わせメニューがあるか確認する
  • 皮の厚さの好み(薄皮のつるりとした食感か、厚めのもちもちした食感か)で店を選び分ける
  • タンメンの基礎|「タン」は湯のこと、塩ラーメンとの作り方の違い

初めての店では、まず基本のワンタンメンを頼み、皮の厚さと具材の配合を確かめてから、次回以降にチャーシューなどを足した組み合わせを試す順番がおすすめだ。同じ「ワンタンメン」という名前でも店ごとの個性の幅が大きいジャンルなので、1杯で判断せず何店か食べ比べてみると、自分の好みの傾向がつかみやすくなる。

ギョウザとの違いや「雲呑」表記など、ワンタンメンで気になること

ワンタンとギョウザは何が違いますか?

どちらも小麦粉の皮で具材を包む点は共通する。全麺連によると、ワンタンの皮はかんすいやコーンスターチを練り合わせてやわらかさと弾力を持たせたもので、餃子よりひと回り大きな8〜10cmの正方形が一般的だ。厚さは餃子より薄く、シュウマイより厚めに作られる。

ワンタンメンはラーメンよりヘルシーですか?

一概には言えない。ワンタンの皮は食品成分表に項目がないため、近いぎょうざの皮・しゅうまいの皮を目安にすると、生100g当たり275kcalで、中華めん(生)の249kcalより少し多い。一方で皮の食塩相当量は0gなので、塩分はほぼスープ次第だ。スープを飲む量で調整するのが現実的である。

「雲呑」という字はどこから来たのですか?

北方で「餛飩」と呼ばれる食べ物を広東語では「ワンタン」と発音し、同じ音の「雲呑」の字が当てられた。スープに浮いている様子が雲のように見えることから名付けられたといわれる。香港の老舗も「麥奀雲吞麵世家」と、この字を店名に使っている。

ワンタンはいつ日本に伝わったのですか?

伝わった時期や場所は、公的資料では確認できなかった。全麺連は、日本ではワンタンがラーメンのバリエーションとして定着したと説明し、歴史については諸説あると添えている。

ワンタンは古代中国からある食べ物ですか?

山東省滕州の薛国故城にある約2,500年前の墓から、水餃子に似た三角形の食物が出土したと新華網が伝えている。ただし中身はわかっておらず、餃子の起源をめぐる話として紹介されたものだ。ワンタンの原型と確かめられたわけではない。

香港の雲呑麺は極細麺なのですか?

極細麺だという説明は確認できなかった。ミシュランガイド香港は、竹で押して作る弾力のある竹昇麺や、アヒルの卵を使う鴨蛋麺を挙げている。

香港式と広州式のワンタンはどう違いますか?

ミシュランガイド香港によると、香港式はエビに豚肉を合わせた餡と薄く繊細な皮が特徴で、広州式は一口大で赤身の豚肉が主体だ。

ワンタンスープだけを単品で頼むことはできますか?

店によって対応は異なるが、麺なしのワンタンスープをメニューに用意している店もある。小鉢感覚で追加したいときに向いているので、メニューで確認するとよい。

専門店の一杯か、トッピングの延長か

ワンタンメンは、広東の「雲呑」という食文化を背景に持つ、ラーメンとは違う楽しみ方ができるメニューだ。香港では1920年代の広州の技を受け継いだ麥奀雲呑麺世家のような店が雲呑麺を伝え、日本ではラーメンのバリエーションとして定着した。自家製かどうか、エビか豚肉かという餡の配合、皮の厚さや包み方、チャーシューなど他の具との組み合わせに注目すると、店ごとの違いが見分けやすくなる。皮そのものに塩分はほとんどないので、塩分はスープで加減すればよい。麺なしのワンタンスープという選択肢も知っておくと、その日の気分に合わせて注文の幅を広げられる。銀座の老舗「共楽」のように、チャーシューワンタンめんを看板にする店で実際に味わってみるのもおすすめだ。

関連記事:中華そば 共楽(銀座一丁目)|昭和31年創業の老舗で味わうチャーシューワンタンめん

出典(確認日はすべて2026-10-12)

  • Mak's Noodle(麥奀雲吞麵世家)公式サイト「緣起」 https://www.maksnoodle.com/%E7%B7%A3%E8%B5%B7
  • 香港政府観光局 Mak's Noodle紹介ページ https://www.discoverhongkong.com/eng/place-to-go/travel.guide-mak-s-noodle.html
  • 新華網「从春秋到春节:饺子中包裹的中国故事」(2024年2月13日) https://www.xinhuanet.com/local/20240213/830956850cf44d13bbed9d5abd62a214/c.html
  • 川崎市 学校給食資料 https://www.city.kawasaki.jp/880/cmsfiles/contents/0000125/125035/misowanntannsu-pu.pdf
  • 北九州市 学校給食資料 https://ssl.city.kitakyushu.lg.jp/files/000042292.pdf
  • MICHELIN Guide Hong Kong(香港のワンタン麺の紹介記事) https://guide.michelin.com/hk/en/best-of/best-wonton-noodles-hong-kong
  • MICHELIN Guide Hong Kong(香港の文化と名物料理の紹介記事) https://guide.michelin.com/hk/en/best-of/hong-kong-culture-specialty-food
  • 全国製麺協同組合連合会「餃子・焼売の皮などの歴史」 https://zenmenren.or.jp/raw_noodle_iroiro/%65tc/history/
  • 全国製麺協同組合連合会 皮類の説明ページ https://zenmenren.or.jp/raw_noodle_iroiro/%65tc/
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」第2章 https://www.mext.go.jp/content/20260327-mxt_kagsei-mext-000029402_02.xlsx (掲載ページ https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html)

ワンタンが日本に伝わった時期や場所、ワンタンの皮単独の成分値は、公的資料では確認できなかった。

アイキャッチ画像
編集部の取材写真を使って作成(ラーメン広場)

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