ラーメン店に入って券売機の前に立ったとき、「現金しか使えない」と気づいて焦った経験がある人は少なくないはずだ。実はここ数年、ラーメン店の支払い方法をめぐる状況は単純に「キャッシュレス化が進んでいる」わけではなく、逆に現金のみに戻す店も出てきている。キャッシュレス決済比率は2025年に58.0%まで上がったが、決済手数料の負担から現金のみに戻す店もある。ステッカーを見て安心せず、使いたい決済手段がその店で本当に使えるかを確かめる方法をまとめた。
- 店によって支払い方法がこれほど違う理由
- キャッシュレス化が進む一方で現金のみに戻す店もある
- 新紙幣対応という別の論点(旧紙幣は今も使える)
- 現金のみの店を見分けるサインと、よくある失敗のパターン
- 事前に確認する方法と、現金を持たずに行って困ったときの対処

手数料と券売機の事情で、店ごとに支払い方法が分かれる
まず全体の数字を押さえておく。経済産業省が2026年3月31日に公表した2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%(決済額162.7兆円)で、内訳はクレジットカード82.7%、コード決済10.2%、電子マネー3.7%、デビットカード3.4%だった。支払いの半分以上がすでに現金以外になっている計算だ。ただしこの数字は国全体の合計で、ラーメン店のような小さな飲食店に限った比率は公表されていない。
店ごとの差を生む大きな要因が、店側が払う決済手数料だ。経済産業省のキャッシュレス推進検討会とりまとめ(2025年12月)では、中小加盟店のクレジットカード手数料率は一般的に1.98〜3.25%の範囲とされている。1杯1,000円なら1杯あたり20〜30円前後が引かれる計算になり、食材費や人件費が上がる中で薄利の業態ほど重く感じやすい。そのため「キャッシュレス化を進める」か「現金のみを維持する、あるいは現金に戻す」かで、店の判断が分かれている。
レジ締めの手間や釣り銭の準備を減らせる
一方で、キャッシュレス決済の導入を進める店も多い。主な理由は次のとおりとされる。
- レジ締めの時間短縮 現金は閉店後に売上金とレジ内の金額を照合する作業が必要になる。経済産業省のとりまとめでは、大阪・関西万博の全面キャッシュレス決済の事例で現金管理業務の作業時間が約10分の1になったと紹介されている
- 人手不足への対応 会計・レジ締め業務の人件費を抑えられる
- 衛生面 調理担当者が現金に直接触れる機会を減らせる
- 取りこぼしの防止 現金を持ち歩かない客が入店をあきらめるケースを減らせる。なお「キャッシュレスにすると客単価が上がる」という説明も見かけるが、ラーメン店について裏付けとなる公的データは確認できなかった
いったん導入しても現金のみに戻す店がある理由
逆に、いったんキャッシュレス決済を導入した店が現金のみに戻すケースも報告されている。背景にあるのは、前述の決済手数料の負担だ。特に個人経営の小規模店では、手数料負担が利益を圧迫しやすく、薄利多売のビジネスモデルでは売上の数%が引かれることの影響が大きいとされる。券売機自体の導入・維持コストや、キャッシュレス決済の入金サイクル(すぐに現金化できない)の問題も、現金回帰を選ぶ理由として挙げられている。
一方で状況は少しずつ変わっている。同じとりまとめでは、2024年秋以降に中小企業向けの低手数料プランが複数の事業者から出ており、手数料率が0.7〜1.3%程度下がった例も確認されたと書かれている。翌日入金や週次入金に対応する決済サービスも出てきた。ただ、こうしたプランは広く知られているとは言えず普及は限定的とも指摘されており、現金のみの店がすぐに減るとは限らない。
新紙幣対応という別の論点
日本銀行は2024年7月3日に新しい一万円券・五千円券・千円券の発行を始めた。これ以降、旧式の券売機が新紙幣を読み取れないという問題が、現金派の店にとっての課題になっている。券売機の紙幣識別部の改修や入れ替えには費用がかかるため、小規模店では対応が後回しになりやすい。対応済みの店の割合や改修費用の相場について、公的な集計は確認できなかった。対応が済んでいない店では「新紙幣は使えません、旧紙幣か小銭でお願いします」といった案内をしていることがある。現金のみの店を訪れる際は、支払い方法だけでなく、この点も念頭に置いておくと安心だ。
なお、財務省と日本銀行は、従来の紙幣は新紙幣の発行後も引き続き使えると案内している。「旧紙幣が使えなくなる」と持ちかける詐欺への注意喚起も出ているので、旧紙幣を慌てて交換する必要はない。新紙幣を受け付けない券売機の店では、むしろ旧紙幣を持っていると助かる場面がある。
事前に確認する方法
訪れる店が現金のみかどうかを事前に把握しておけば、券売機の前で慌てずに済む。確認できる主な手段は次のとおり。
| 確認方法 | ポイント |
|---|---|
| Googleマップの店舗情報 | 「支払い方法」の項目にクレジットカード・電子マネー・コード決済の対応可否が表示されている場合がある |
| 店の公式サイト・SNS | 支払い方法について明記している店もある。特に券売機を新調した際に告知されることが多い |
| 店頭の掲示 | 入口や券売機付近に「現金のみ」「キャッシュレス決済可」の掲示がある店が多い |
| 食べログ等のグルメサイト | 支払い方法が項目として掲載されている場合があるが、更新が追いついていないこともある |
特にGoogleマップの情報は、店側や利用者が更新することがあるため、訪問直前に確認しておくと精度が高い。ただし、いずれの情報源も店の対応が変わった直後は反映が遅れることがあるため、100%正確とは限らない点には注意が必要だ。
現金のみの店を見分けるサイン
入口や券売機を見れば、ある程度は判断できる。ただしどのサインも決め手にはならないため、下の表は目安として使ってほしい。
| 店頭で見えるもの | 現金のみの可能性 | 注意点 |
|---|---|---|
| 券売機に紙幣・硬貨の投入口しかない | 高い | 券売機とは別に、レジでカード払いを受け付ける店もある |
| 券売機にカードリーダーやコード読み取り部がある | 低い | 使えるブランドが限られている場合がある。交通系ICだけ対応という例も |
| 入口に決済ブランドのステッカーが並んでいる | 低い | 古いステッカーが残ったまま、という店もあり得る |
| 「現金のみ」「新紙幣不可」などの貼り紙 | 確定に近い | 貼り紙は券売機の横や下など目立たない場所にあることも多い |
| 何も掲示がない | 判断できない | 入る前に店員に一声かけて確認するのが確実 |
よくある失敗のパターン
支払いで困るのは、確認をまったくしなかったときよりも「確認したつもり」だったときのほうが多い。典型的なのは次のような流れだ。
- ステッカーを見て安心した 入口にブランドのステッカーがあったので入ったが、券売機は現金専用で、カードは使えなかった
- 対応ブランドが違った キャッシュレス対応の券売機だったものの、普段使っているコード決済には対応していなかった
- 一万円札しか持っていなかった 高額紙幣を受け付けない券売機や、新紙幣を読めない券売機だった。千円札を数枚持っておけば避けられることが多い
- 地図アプリの情報が古かった 以前の情報では「カード可」だったが、その後に現金のみへ切り替わっていた
- 連れが払うと思い込んでいた グループで行ったところ、誰も十分な現金を持っていなかった
事前確認が特に役立つ人、気にしなくてよい人
| タイプ | 事前確認の必要度 |
|---|---|
| 普段まったく現金を持ち歩かない人 | 高い。初めての店は必ず確認したい |
| 特定のコード決済だけを使っている人 | 高い。キャッシュレス対応店でも使えないことがある |
| 個人経営の店や老舗を巡るのが好きな人 | やや高い。現金専用の券売機が残っていることがある |
| 財布に千円札と小銭を常に入れている人 | 低い。新紙幣不可の券売機でも旧紙幣や硬貨で対応しやすい |
現金を持たずに行って困ったときの対処
現金のみの店だと分かった場合、近くのコンビニやATMで現金を用意してから戻るのが基本的な対処法になる。券売機の前で気づいてから慌てて探すより、入店前に店頭の掲示を確認する習慣をつけておくほうが確実。グループで訪れる場合は、誰か一人が現金を持っているかを事前に確認しておくと安心できる。
券売機の種類による違い
券売機自体にも複数のタイプがあり、対応する支払い方法が異なる。
| 券売機のタイプ | 対応する支払い方法 |
|---|---|
| 現金専用の旧式券売機 | 紙幣・硬貨のみ。おつりの用意や旧紙幣への対応状況を店が管理する必要がある |
| キャッシュレス対応の券売機 | クレジットカード・電子マネー・コード決済のいずれか、または複数に対応 |
| タッチパネル式の多機能券売機 | トッピングの細かい選択やセットメニューの組み合わせに対応し、決済方法も複数用意されていることが多い |
支払い方法で店を選ぶときのポイント
- 初めて訪れる店は、事前にGoogleマップや店の公式情報で支払い方法を確認しておく
- 現金を持ち歩く習慣がない場合は、キャッシュレス決済対応と明記された店を優先する
- グループでの利用時は、割り勘のしやすさも含めて決済方法を確認しておく
- 券売機のタイプ(現金専用か複数対応か)を入口や外観から判断できることもある
現金のみの店の今後、新紙幣、旧紙幣の扱い
「現金のみ」の店はこれから増えますか、減りますか?
現時点では両方の動きが同時に起きているとされる。手数料負担を理由に現金回帰する店がある一方、人手不足対応としてキャッシュレス化を進める店も多く、一方向のトレンドとは言い切れない状況にある。
電子マネーとコード決済は同じものですか?
別の仕組み。電子マネーはICカード等にチャージした残高で支払う方式、コード決済はスマートフォンアプリのQRコード・バーコードを読み取って支払う方式で、店によって対応状況が異なる。
券売機がキャッシュレス対応でも、現金しか使えないことはありますか?
まれにある。券売機自体はキャッシュレス対応でも、特定のカードブランドやコード決済サービスには対応していない場合があるため、自分がよく使う決済手段に対応しているかまで確認しておくと安心。
現金のみの店は今後もずっと現金のみですか?
店の経営判断次第で変わる。一時的にキャッシュレスを取りやめている店が、状況が変われば再導入する可能性もあるため、最新情報は訪問の都度確認するのが確実。
外国人観光客が多いエリアの店は、キャッシュレス対応が進んでいますか?
インバウンド需要を意識してキャッシュレス対応を強化している店は多い傾向にあるが、必ずしもすべての店が対応しているわけではないため、個別の確認は必要。
新紙幣が使えない券売機だった場合、どうすればいいですか?
店内や券売機に「新紙幣不可」の案内があれば、旧紙幣や小銭を用意するか、近くのATM・コンビニで両替する必要がある。訪問前に店の情報を確認しておくと、現地で慌てずに済む。
旧紙幣(従来の千円札・一万円札)はいつまで使えますか?
財務省と日本銀行は、従来の紙幣は新紙幣の発行後も引き続き使えると案内しており、使用期限は設けられていない。新紙幣を読み取れない券売機の店では、旧紙幣のほうが使いやすいこともある。
日本のキャッシュレス決済はどのくらい普及していますか?
経済産業省の公表では、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%だった。政府は2030年までに65%、将来的には80%を目標にしている。ただし飲食店や個人店に絞った比率は公表されておらず、店による差は大きい。
店がキャッシュレス決済で払う手数料はどのくらいですか?
経済産業省のとりまとめ(2025年12月)では、中小加盟店のクレジットカード手数料率は一般的に1.98〜3.25%とされている。2024年秋以降は低手数料プランも出ているが、契約条件は事業者や店によって異なる。
まとめ
ラーメン店の支払い方法は、手数料負担を理由に現金のみへ戻す店と、業務効率化のためにキャッシュレス化を進める店の両方が存在し、単純な一方向のトレンドではない。訪れる前にGoogleマップや店の公式情報、店頭の掲示を確認する習慣をつけておけば、券売機の前で困ることを避けられる。現金を持ち歩かない人ほど、この事前確認の一手間が安心につながる。
出典(いずれも2026年10月3日確認)
- 経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2026年3月31日公表、6月18日資料差し替え) 2025年の比率58.0%・決済額162.7兆円・決済手段別内訳、政府目標(2030年65%、将来80%)
- 経済産業省 キャッシュレス推進検討会「とりまとめ」(2025年12月) 中小加盟店のクレジットカード手数料率1.98〜3.25%、2024年秋以降の低手数料プランと0.7〜1.3%程度の低下事例、翌日・週次入金サービス、大阪・関西万博で現金管理業務の作業時間が約10分の1になった事例
- 日本銀行「新しい日本銀行券特設サイト」 新紙幣の発行開始日(2024年7月3日)
- 財務省「『現行の日本銀行券が使えなくなる』などを騙った詐欺行為にご注意ください」 従来の紙幣が引き続き通用すること
ラーメン店など飲食店に限ったキャッシュレス対応率、新紙幣対応済みの券売機の割合、券売機の改修費用の相場は、公式資料では確認できなかった。Googleマップや店舗の掲載情報は各サービスの表示に依存するため、訪問前に最新の状態を確かめてほしい。
アイキャッチ画像: 編集部の取材写真を使って作成
注文の仕組みと、値段の事情
初めての店に一人で入るときの流れ、キャッシュレス対応の現状、券売機とタブレット注文、値上げが続く理由を扱った記事です。