テイクアウト容器が紙製に変わった、割り箸の代わりにマイ箸で割引がある。ラーメン店とSDGs(持続可能な開発目標)は一見結びつきにくいが、こうした変化はその一端だ。容器の見直しや食材調達の工夫、省エネ設備の導入など、個人経営の小さな店舗でも始められる取り組みは意外に多い。環境配慮の取り組みはどんな分野に分かれ、何を基準に評価できるのか。客の側から取り組みを見分け、応援するための視点もあわせて押さえておきたい。
- ラーメン店におけるSDGsとは何か
- 取り組みが広がってきた背景
- 取り組みの分類と特徴
- 他業態との違い
- 客として取り組みを見分け、応援する方法
ラーメン店におけるSDGsとは何か
SDGsとは2015年に国連サミットで採択された、2030年までに達成を目指す17の国際目標の総称である。貧困や気候変動、エネルギー、まちづくりなど幅広い分野にまたがっており、大企業だけでなく中小の飲食店にも関係する項目が含まれている。ラーメン店の場合は特に「つくる責任つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」「陸の豊かさも守ろう」といった目標との関連が語られることが多い。大がかりな設備投資をしなくても、容器の材質を変える、食材の仕入れ先を見直すといった日々の運営の工夫だけで取り組みを始められる点が、飲食業界でSDGsが広がりやすい理由のひとつとされている。
取り組みが広がってきた背景
外食産業全体でプラスチックごみの削減や食品ロス対策が求められるようになった流れを受け、ラーメン業界でも意識が高まってきたと言われている。特にテイクアウトやデリバリーの需要が増えたことで使い捨て容器の使用量が増加し、その見直しが課題として意識されるようになった。また消費者側の環境意識の高まりも後押しの一因とされ、価格や味だけでなく店の姿勢を選択基準に加える客層が徐々に増えているという見方もある。行政による補助制度や、飲食店向けの環境配慮ガイドラインの整備が進んだことも、取り組みを後押しする要因になっているようだ。
容器・パッケージの見直し
テイクアウト容器をプラスチックから紙製や生分解性素材に切り替える動きは、比較的取り組みやすい工夫として広がっている。割り箸をマイ箸持参で割引する仕組みや、おしぼりを布製に切り替えて廃棄物を減らす取り組みも紹介されることが多い。プラスチックストローの紙製への切り替えなど、細部にわたる見直しを進める店も見られる。こうした変更はコストが上がる場合もあるため、価格転嫁の説明を丁寧に行う店とそうでない店とで客の受け止め方が分かれることもあるようだ。
食材調達と地産地消
近隣の農家から野菜を仕入れることで、輸送に伴う環境負荷(いわゆるフードマイレージ)を抑える取り組みも紹介されている。地産地消は地域経済への貢献という側面もあわせ持つため、環境配慮と地域振興を同時に打ち出す店が少なくない。規格外野菜の活用や、廃棄予定だった食材を仕込みに使う工夫を通じて食品ロスの削減に取り組む例も見られる。スープの出汁がらを堆肥や飼料として再利用する取り組みが紹介されることもある。
エネルギー・資源の効率化
厨房で使用する調理機器を省エネ性能の高いものに更新したり、LED照明や太陽光発電を導入したりすることで光熱費の削減とあわせて環境配慮を打ち出す店もある。ガス消費量の多い製麺・製湯工程を見直し、余熱や排熱を有効活用する工夫が語られることもある。水資源についても、食器洗浄の方法や節水型設備の導入によって使用量を抑える取り組みが紹介される場合がある。
情報発信と地域連携
取り組みの内容を店内掲示やSNSで発信し、客の理解や共感を得ようとする店もある。こうした発信が新たな客層の来店動機になっているという見方もある。地域の清掃活動への参加や、フードバンクへの食材提供など、店外での活動を通じて姿勢を示す例も見られる。取り組みを一方的に押し付けるのではなく、価格やメニューの変化とセットで丁寧に説明する姿勢が、客の理解を得るうえで重要とされている。
取り組みの分類と特徴
ラーメン店のSDGs関連の取り組みは、大きく「資源・廃棄物」「調達・食品ロス」「エネルギー」「情報発信・地域連携」の4分野に整理できる。それぞれ着手のしやすさやコスト負担、効果の見えやすさが異なるため、店によって力を入れる分野に違いが出やすい。
| 分野 | 主な取り組み例 | 着手のしやすさ | 効果の見えやすさ |
|---|---|---|---|
| 資源・廃棄物 | 容器の脱プラ、マイ箸割引、布おしぼり | 比較的容易 | 客の目に見えやすい |
| 調達・食品ロス | 地産地消、規格外野菜の活用、出汁がらの再利用 | 仕入れルート次第 | やや分かりにくい |
| エネルギー | 省エネ機器、LED照明、太陽光発電 | 初期投資が必要 | 光熱費として間接的 |
| 情報発信・地域連携 | SNS発信、清掃活動参加、フードバンク提供 | 比較的容易 | 発信次第で見えやすい |
他業態との違い
同じ飲食業でも、カフェやファストフードチェーンと個人経営のラーメン店とでは取り組みの進め方に違いが見られる。チェーン店は本部主導で統一的な施策を全店舗に展開しやすい一方、個人店は店主の裁量で柔軟に取り組みを選べる反面、情報発信力や資金力の面で制約を受けやすい傾向がある。
| 比較軸 | チェーン店 | 個人経営のラーメン店 |
|---|---|---|
| 意思決定 | 本部主導で統一的 | 店主の裁量で柔軟 |
| 資金力 | 大規模投資がしやすい | 小規模な工夫が中心になりやすい |
| 情報発信 | 公式サイトや広報部門で統一発信 | SNS個人アカウントでの発信が中心 |
| 地域連携 | 全国的な取り組みになりやすい | 地元密着の活動になりやすい |
客として取り組みを見分け、応援する方法
店のSDGsへの姿勢を確認したい場合、まず店内の掲示物やメニュー表に説明があるかを見てみるとよい。容器やおしぼりの素材、食材の産地表示など、細かな部分に工夫が表れていることが多い。SNSアカウントを運営している店であれば、仕入れ先や取り組みの背景を発信していることもあるため、事前に確認してから来店するのもひとつの方法である。
取り組みを応援する側としては、マイ箸やマイ容器の持参に協力する、食べ残しを出さないよう注文量を調整する、地域の食材を使ったメニューを選ぶといった行動が挙げられる。価格が多少高めに設定されている場合も、その背景にある取り組み内容を理解したうえで選ぶという視点を持つと、店との関係性も築きやすくなるだろう。
数値目標がある取り組みとして見る
環境配慮の取り組みは印象論になりやすいが、食品ロスには国の数値目標がある。農林水産省と環境省の推計によると、2024年度の食品ロス量は約461万トンで、事業系が約237万トン、そのうち外食産業からの発生が約70万トンである。事業系は2000年度比で57%削減され、2030年度までに60%削減という目標が置かれている。
| 区分 | 2024年度推計 |
|---|---|
| 食品ロス総量 | 約461万トン |
| 事業系 | 約237万トン |
| うち外食産業 | 約70万トン |
| 削減目標 | 2030年度に2000年度比60%削減(2024年度時点で57%削減) |
スープの仕込み量を減らす、売り切れ次第閉店にするという運営は、この目標に直結する取り組みである。取り組みを掲げる店を見るときは、何をどれだけ減らしたかまで書かれているかを確認したい。
出典 農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)」(2026年6月30日公表、事業系約237万トンのうち外食産業約70万トン、2000年度比57%削減、2030年度60%削減目標)、環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」(2026年6月30日公表、総量約461万トン、家庭系約224万トン、事業系約237万トン)。いずれも2026年10月4日確認
味への影響、値段、個人店でできる施策を一問一答で
ラーメン店のSDGsの取り組みは味に影響しますか
容器やエネルギー面の工夫が中心であれば味への直接的な影響は少ないとされる。ただし食材調達を地産地消に切り替えた場合、旬や産地による風味の違いが出ることはある。
環境配慮の取り組みをしている店は値段が高くなりますか
生分解性容器や地元食材の仕入れコストが通常より高くなる場合、価格に反映されることがある。ただし全ての取り組みが値上げにつながるわけではなく、省エネによる光熱費削減など、コスト減につながる工夫も存在する。
個人店でも取り組みやすいSDGs施策はありますか
マイ箸割引や布おしぼりへの切り替え、食品ロスを抑える仕込み方法の見直しなど、初期投資が少なく始めやすい施策から着手する店が多いとされる。
SDGsの取り組みをしていない店に問題があるということですか
そうとは言い切れない。資金や立地、業態によって取り組みやすさは異なり、取り組みを表立って発信していないだけの店も存在する。取り組みの有無だけで店の姿勢を判断するのは難しい面がある。
地産地消とSDGsはどう関係していますか
地元の食材を使うことで輸送に伴う環境負荷を抑えられるとされ、気候変動対策の目標と結びつけて語られることが多い。あわせて地域経済への貢献という側面もあわせ持つ。
プラスチック容器を紙製に変えるだけで効果はありますか
単体での効果は限定的だが、複数の店舗が同様の取り組みを積み重ねることで業界全体としての廃棄物削減につながると考えられている。
客がSDGsの取り組みを確認する方法はありますか
店内掲示やメニュー表の説明、SNSでの発信内容を確認する方法が一般的である。取り組みの詳細を店員に直接尋ねてみるのもひとつの方法だろう。
今後ラーメン店のSDGsはどう広がっていくと考えられますか
行政の補助制度やガイドラインの整備が進むにつれて、個人店でも取り組みやすい環境が徐々に整っていくと考えられる。消費者の意識の高まりとあわせて、今後も広がりが続くとみられている。
容器・調達・エネルギー・発信の4分野、個人店は身近な工夫から
ラーメン店のSDGsへの取り組みは、容器・廃棄物、食材調達、エネルギー、情報発信・地域連携という4つの分野に整理でき、それぞれ着手のしやすさやコストの負担が異なる。個人経営の店であっても身近な工夫から始められる施策は多く、小さな積み重ねが業界全体の環境配慮につながっていくと考えられる。客としても掲示や発信内容を確認しながら、無理のない範囲で取り組みを理解し、応援する姿勢を持つことができるだろう。
アイキャッチ画像: 編集部の取材写真
アレルギー表示、カロリー表示、禁煙対応も店の姿勢の表れ
環境への配慮と同じく、表示や店内のルールにも店の考え方は出る。客の目線で確かめたい3本。